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プリムラの品種 Varieties of Primula

プリムラの品種について

【シクラメン,プリムラ】 柳 宗民著 主婦の友社より


プリムラの原種


プリムラ類は、北半球の温帯域に550種ほどが野生しているといわれ、春の訪れと共にその可憐な花をほころばせる。わが国にも20種ほどが各地の山野に野生をする。外国産のものもわが国産のものも、その野生種自体可憐で美しいものが多く、そのままで十分に観賞できるものが多いのが、このプリムラ類の特徴でもあろう。ただし、この一属は山岳地帯に野生するものをはじめ、冷涼な環境を好むものが多いため、平地栽培ではかなり栽培に面倒なものが多く、山草的な特殊培養をするならばともかく、園芸的に比較的容易に栽培できるものとなるとかなり種類数が少なくなってくるが、その野趣を楽しむのも面白い。

アコーリス Primula acaulis(acaulia=無茎の、丈の低いの意)
わが国ではポリアンタ系やジュリアン・ハイブリッド系と混同されてしまっているが、この種類はヨーロッパ産のウルガリス種から発達したもので、ポリアンタ系が花茎を伸ばしてその上に花をつけるのに対し、葉の間から直接小花梗をだして花をつける違いがあり、最盛期には、花がおわんを伏せたようにギッシリと咲き花壇などの縁取りようとして素晴らしい。

花はジュリアン・ハイブリッド系よりも一周りから二周り大きく、花色はポリアンタ同様豊富であるが、花期は短く、一斉に咲いて終わる。性質は強く、よく宿根し、株分けでも容易に増やせるなど、鉢物用よりも花壇用プリムラとして素晴らしい。


ジュリエ Primula juliae
コーカサス原産の小型のプリムラで、ポリアンタと同じグループのものである。草丈は5~6センチ程度で、3~4月頃、小型で丸形の葉のなかから桜形の径2~2.5センチぐらいの可愛らしい花をアコーリス型に咲かせるが、葉は花後かなり大きく茂ってくる。花色は紫紅色、桃色、白色の三通りがある。山草的な趣があるため、昔から山草愛好家の間で親しまれ、小鉢作りにして楽しまれてきたものであるが、性質は大変強く、地植え栽培でよく育ち、株分けで容易に増やすことができる。

イギリスでは古くから栽培され、ポリアンタやアコーリスと交配をした ジュリアナ・ハイブリッド系が出来ているが、ジュリアン系もこの交配系に入る。


ロゼア Primula rosea
ヒマラヤ原産の可愛らしい小型のプリムラ。ロゼアの名のようにばら色の小花を、10センチぐらいに伸びる花茎上に輪生して咲かせる姿が、いかにも可憐で、小鉢植えにして楽しまれる。ただしヒマラヤ原産である為に、プリムラ類の中でも冷涼な気候を好み、わが国では、寒冷地以外では夏越しがかなり厄介である。そのため、一般的にはあまり栽培をされていないが、山草愛好家の間では昔より人気のあるプリムラである。富士砂あんどを用い、他の高山植物同様にして育てるのがコツ。

園芸的な改良品種はないがヨーロッパではアルパイン・プランツの1つとして愛好者が多い。種子繁殖をすると花に大小、花色に濃淡の変異が出てくることがある。


クリンソウ Primula japonica
学名をプリムラ・ヤポニカと言うように、わが国原産のプリムラである。ちょっと小松菜のような形をした歯を茂らせ、20センチ以上になる花茎を直立させて、濃紫紅色の径1.5センチぐらいの花を輪生し、これがちょうど五重の塔の九輪のように何段にも咲くところから九輪草の名がつけられたものである。

わが国の山間の谷川べりや湿潤な地に群生し、花盛りには大変美しい。ときに白で赤目入りのものや、淡紅色のものなどの変種もある。

日本産のプリムラの中では最も大型種で、サクラソウほど園芸化はされていないが、池畔などの湿潤地に植えるのに適している。高温地では、夏の間に弱りやすいので、どちらかといえば冷涼地向きの種類といえよう。


デンティキュラータ Primula denticulata
ヒマラヤ原産のプリムラにはいろいろな種類があるが、この中で最も園芸的に知られているのがこのデンティキュラータであろう。形態的にはちょっとクリンソウに似ているが、花は小さく、花茎上にギッシリと球状につく。冷涼な気候を好み、高温地でもクリンソウよりも栽培しやすいが、花房があまり大きくならないし、花後枯れることが多い。しかし、冷涼地では完全に宿根化し、花房が驚くほど大きくなる。

花色は藤桃色であるが、白花のものもある。変種のカシュメリアナには紅色花があり、ルービンという品種が特に美しい。クリンソウとともに山草愛好家によろこばれるプリムラであろう。


その他の品種



マラコイデス Primula malacoides
日本名はオトメザクラ(乙女桜)、またはケショウザクラ(化粧桜)。生まれ故郷は中国の雲南省で、ヨーロッパで温室用プリムラとして改良発達したもの。日本名のように、大変優しい感じのする愛らしきプリムラで、冬から春へかけて半年近くもつぎつぎと花立し、一花茎に輪状に何段も花をつける。

花は温室用プリムラ類の中では小輪であるが、花数が大変多いので、最盛期には花で埋まるようになる。ヨーロッパの他、わが国でも品種改良が盛んで、花径3センチ以上になる巨大輪種から1センチ程度の小輪種まで、平咲き、フリンジ咲き、八重咲きなど花形も多様で花色も、赤紅、紅、バラ色、ピンク、藤桃色、白、赤紫色などとなかなか多彩である。

マラコデスの品種には、2倍体の小輪系多花性種と4倍体の大輪とがある。うぐいすは前者で、性質強く耐寒性で、庭植で栽培できるのが特徴。こぼれ種子で増える。スノー・クインは後者の白花品種として代表的な品種である。うつり紅は白地に赤目入りで、二の丸ともいう。ただし花色の固定度は100%でなく、濃紅色花がかなり出る。

マラコイデスには国産品種が多く、富士の輝、緋乙女、改良光輝、改良紅衣いずれも国産の優良品種である。富士の舞は農林水産省品種登録品種でサーモンピンク八重咲きの素晴らしい大輪種、富士の雪は小輪白色の八重咲き品種で極めて多花性、富士の粧は上品な藤桃色大輪八重咲きで、いずれも100%八重咲きとなる八重咲き種にビッグスリーといえよう。

ポリアンタ Primula x polyantha
一般にはポリアンサスの名で親しまれ、また、西洋宿根サクラソウなどともいう。ヨーロッパ原産のエラチオール種やベリス種などの原種をもとに花壇用宿根草として改良されたものである。株の中心から太い花茎を出し、その先に、赤、桃、白、黄、青、紫、赤紫などの鮮やかな色彩の大輪花を輪生して咲かせて、大変に華やかである。

元来は花壇用草花であるが、アメリカのライネルト氏によって改良された巨大輪のパシフィック・ジャイアント系が輸入されてからは、温室鉢物用プリムラとして扱われるようになってしまった。しかし在来種は性質が強く、小輪ではあるが花壇用としてはこのほうが適している。スーパージャイアント系は特に巨大輪のグループで花径7~8センチに及ぶ。プチ系はアコーリス型の極わい性種であるが花は大きい。ゴールド・レース、ブライト・レッドは共に花壇用種で花はやや小さいが多花性で性質はきわめて強い。


ジュリアン・ハイブリッド Julian Hybrid
ポリアンタ系と同系列の原種の一つに、ごく小型で可憐なジュリエ種があるが、このジュリエの小型で可憐な姿と、ポリアンタ系のもつ多彩な花色をかさねもつのが、このジュリアン・ハイブリッドである。

これは、ジュリエとポリアンタとを交配して改良をしたもので、古くヨーロッパでもこの交配は行われていたが、今日広く栽培されているものは近年わが国で改良されたものであって、いろいろな品種が生まれているが、いずれもポリアンタ系より丈夫でよく宿根し、小鉢物として楽しむ他、花壇用としてもすぐれている。また原種のジュリエよりも花期がかなり長いのも特徴の一つであろう。


オブコニカ Primula obconica
温室用プリムラとしては大型種で、径3センチ以上の大輪花をたくさん咲かせ、ポリアンタ系とは違った豪華さである。原産地は中国の湖北省で、ヨーロッパにおいてマラコイデス同様に温室草花として改良されたもの。大輪であるばかりではなく、花色も紅、ピンク、白、赤紫、青紫色のほか、美しいアンズ色のものや、赤紫色で弁周が白くなる換わった色彩の品種もある。

冬から春へかけてよく咲くが、四季咲き性がかなり強く、冷涼地では夏にも良く咲くし多年生化しやすい。注意したいことは、茎葉の細毛からプリミンという毒素を分泌し、ときにかぶれることがあるので、かぶれ性の人は茎葉を触らない方が安全である。

オブコニカには赤系の優良種が少ないが、ルージュ・レッドは巨大輪フリンジ咲きの美しい花を咲かせる。チューリッヒは丸弁の赤紫色で花付きがよく、アールスメア・ピンクは優美なピンクで、ピンク系で最も美しい。変わった色彩のナンバーワンは赤に白いボカシ縁取りとなるアハトで、一般にはうつり紅といわれる。最もch-ミングな色彩がアプリコットで、一名夕映えともいわれ、この品種の出現でオブコニカが一躍プリムラ界の寵児になったといってよい。


ダブル・プリムローズ Double Primroses
アコーリスの八重咲き種をダブル・プリムローズという。プリムローズの名は、一般にはサクラソウ類の英名として呼ばれているが、正確にはプリムラ・ウルガリスから改良されたアコーリス系のものの英名。アコーリス系なので、ポリアンタ系とは異なり、花茎を伸ばさず株元から直接小花梗をだして花を咲かせるのが特徴である。

ダブルプリムローズは雄シベ、雌シベが花弁に変化しているものが多く、タネが取れないので、もっぱら株分けで増やす。性質は普通のアコーリス系と同様、丈夫で作りやすく、満開時にはお椀を伏せたように花で株がうずもれる。


キューエンシス Primula x kewensis
プリムラ類の中で大変特異な生まれ方をしたのがこのキューエンシスである。英国のキュー植物園で19世紀末に、フロリバンダ種とウェルティキルラータ種との自然雑種として誕生したもので、キュー植物園で生まれたというのでこの名がつけられた。葉は浅緑色で、縁に細かい鋸歯があるヘラ状で、冬から春へかけて高さ15~20センチの茶褐色の花茎をだし、鮮黄色桜形の花を2~3段輪生して咲かせる。

派手ではないがその黄色の色合いは大変美しく、特に蛍光灯下でよく映え、温室鉢物用プリムラとして、大変ユニークな存在といえよう。茎葉に白粉を帯びるファリノーサという変種もあるが、無粉なツールゴールド種が一般的である。


シネンシス Primula sinensis
オブコニカ同様、中国湖北省の原産で、その種名からも中国生まれであることがうなづける。葉が深く切れ込むのが特徴である。日本名もチュウカザクラ(中華桜)という。オブコニカとともにヨーロッパで温室草花として改良園芸化され、濃紅、緋紅、ピンク、白、青紫色などのほか、他のプリプラ類には見られない鮮やかな朱赤色の品種があり、色彩的に魅力的なプリムラである。

大輪咲きで、平弁桜花形のステラータ系と弁周に細かい切れ込みのあるフリンジ咲きのフィンブリアタ系とがあるが、一般に栽培されるのはフィンブリアタ系で、稀に八重咲き種もある。多年草化しやすく作りやすいが、わが国ではどういうわけかあまり栽培されていない。


オーリキュラ Primula auricula
プリムラ類の中では特殊なグループで、葉肉の厚いヘラ状の葉を根生するところから、日本名でアツバサクラソウ(厚葉桜草)といわれる。10センチ以上に伸びる花茎上に、径2~3センチぐらいの花を輪生するが、花色が紫褐色、茶褐色、黄褐色などと大変色が渋く、中心部に大きい黄白色の目模様が入るのが特徴で、これが大変人目を引く。

原産地は、ヨーロッパ東南部からハンガリーにかけての石灰岩山岳地帯で、イギリスで特に改良が進み、愛好者の団体まであるが、高温多湿を特に嫌う為、わが国では冷涼地をのぞき、栽培しにくいことからあまり栽培されていない。花がきわめて大きい見事なショー・タイプのものもあるが、わが国では比較的丈夫なモナーク系が適している。